メタンフェタミン(MA)投与により、高体温をきたすことはよく知られている。この原因は骨格筋での代謝促進によると考えられているが、この現象に関与する因子については十分検討されていない。今回、MA投与がラットの体温および行動量に与える影響について、副腎から分泌されるグルココルチコイドの関与について検討した。 ラットにはMA(0.1および2mg/kg)を腹腔内投与し、投与直後から4時間にわたり体温および変化の行動を観察した。体温の測定は、テレメトリーシステムを用い、あらかじめ体温データ測定用の送信機を動物の体内に埋め込んでおくことで、薬物投与後の体温変化のデータを非侵襲的に連続的に測定した。さらに、運動量の変化についても赤外線ビームの遮断回数から移所運動量と立ち上がり運動の回数を計測した。また、副腎を摘出しキラット(ADX)およびコルチコステロン合成阻害薬(メトピロン)投与後の動物についても検討を行った。 MA2mg/kg投与群では、コントロールに比較して有意な体温上昇がみられた。一方、0.1mg/kg投与群では有意な体温上昇はみられなかった。ADX群およびメトピロン投与群では、MA(2mg/kg)投与後の体温上昇が抑制された。このことから、MA投与後の体温上昇にグルココルチコイドの関与が示唆された。また、ラットの運動量変化は、2mg/kg投与群で体温が投与前値に回復して以降もコントロールと比較して増加した。体温変化に比べ、運動量の変化がより長期間持続することが示唆された。今後さらにグルココルチコイドの受容体との関連や、副腎皮質ホルモンの分泌調節系への影響についても検討を進める予定である。
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