研究概要 |
骨粗鬆症による骨量減少に対する治療において、骨芽細胞による骨形成を亢進させて骨量増加作用をおこすことが理想ではある。しかし現在まで強力な骨形成促進薬は存在していない。骨形成促進薬開発のためには、内分泌ホルモンをはじめとした液性因子による骨芽細胞の増殖と分化の制御機構を解明し、骨形成シグナルにおける中心的な役割を果たす骨芽細胞内でのシグナル伝達因子を同定することが重要と考え、以下の検討を行った。 近年、脊椎動物のシグナル伝達においてWntシグナル伝達経路が注目され、特に骨芽細胞における骨形成においてはWntに対するレセプターとして機能するLRP5が注目されている。本研究において、このLRP5の遺伝子多型が骨量に与える影響に対して検討を加えたところLRP5遺伝子のイントロン17における遺伝子多型が閉経後女性の骨密度に影響を与えることを発見した(J.Bone Miner.Metab.24;341-345,2004)。さらに、LRP5のみならず、他のWntシグナル伝達因子であるsFRP4も閉経後女性の骨密度に影響を及ぼすことを発見した(Geriatric Gerontol Int 4;175-180,2004)。 一方、近年マウスの骨形成ならびに骨量に大きな影響を与える遺伝子としてAlox15遺伝子が注目された。本研究で、ヒトAlox15遺伝子における5'上流領域の遺伝子多型が閉経後女性の骨密度に影響を及ぼすことを発見した(J.Bone Miner.Metab.In press)。Aloxl5遺伝子は核内受容体の一つであるPPARγのリガンドを産生する酵素であることから、今後はWntシグナル経路に加え、Alox15-PPARγ経路における遺伝子群が骨形成にはたす役割を探求することで新たな骨形成シグナルが解明されることが期待される。
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