研究概要 |
ヒト炎症性乳癌株(WIBC-9)を18代継代し、さらに、各代のカリオタイプを解析したことにより、世界で唯一の安定化ヒト炎症性乳癌マウス移植株の作製に成功した(Cancer Res.2001;61:445-51.)。同移植株を解析し、血管擬態(がん巣内において、血管内皮細胞の存在なく、がん細胞自らが管腔形成し、管腔内に血流を有する状態)の存在を明らかにした(Cancer Res.2002;62:560-6.)。387例の乳癌切除症例の検討により、血管擬態呈示腫瘍は腫瘍浸潤増殖能が高く、血管擬態呈示症例は血行性転移・再発率が高いことを証明した(Int J Cancer.2002;99:821-8.)。血管擬態呈示腫瘍内における血流動態の解析結果から、既存の血管を利用するだけでなく、血管擬態を利用する新しいmolecular targeted oder made chemotherapyの可能性を示唆した(Cancer Res.2002;62:860-6)。その可能性の1つとして、血管擬態呈示乳癌の遺伝子解析からVEGF-Flt-1, Tie-2-Angiopoietin1,2 pathwayを利用した血管新生とは異なる、がん細胞自体の増殖様式が示唆された(Int J Cancer.2002Jun20;99(6):821-8.)。同pathwayを阻害することを目的として、可溶化型Flt-1、Tie-2を発現するadenovirus vectorを作製し、ヒト炎症性乳癌マウス移植株に対して有効であることを証明してきた(Int J Cancer.2002 May 20;99:344-51.)。 平成16年度研究実績としては、1.マウス骨髄、末梢血からの効率を高めたEPC採取方法は既に開発し、前記論文にて報告しており、安定した新しいin vitro expansionの方法を用いて、実験中である。2.ヒトEPC、がん細胞に対して遺伝子導入効率を高めたウィルスベクターの開発については、アラバマ大学との共同研究(アラバマ大学David Curiel遺伝子、分子生物学教授指導の下、アラバマ大学遺伝子研究所にて行った)でCOX-II promotorを用いたLac-G発現adenovirusを作製した。同virusを増幅し、SK-BR3,MCF-7,へのin vit掬での遺伝子導入効率を確認し、WIBC-9を含めた実験動物においてin vivo実験を施行中である3.新たな血管擬態呈示乳癌株を作製し、各代のカリオタイプを解析を含めた新たな安定化ヒト乳癌マウス移植株を作製中である。
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