脳浮腫は様々な病態に随伴して発症し、しばしば致命的となる。水チャネルであるアクアポリン(AQP)が脳浮腫に関与している可能性は示唆されているが、その発生機構は十分に解明されていない。本研究では、正常AstにおけるAQPの発現調節機構に関して、浸透圧変化に対するAQPの発現変化とそれに対する細胞内情報伝達系の関与に注目し、基礎的データを収集する。さらには、病的状態(脳浮腫)におけるアクアポリンの発現変化と細胞内情報伝達系との関係を詳細に検討することにより、AQP発現の調節を主眼においた新しい脳浮腫治療法確立を目指す。 平成15年度の研究目標は、1.細胞内情報伝達系を介したAQP発現調節機構の解明、2.低酸素状態におけるAQP発現調節機構、以上2点を掲げた。 1.正常アストロサイトにおける、細胞内情報伝達系を介したAQP発現調節機構の解明 正常アストロサイト(Ast)においては、protein kinase A(PKA)とPKCとにより、複雑に発現調節が行われていることが分かった。また、浸透圧変化に対して、代表的な細胞内情報伝達系であるP38MAPKを介してAQPが調節されていることが解明できた。 2.低酸素状態におけるAQP発現調節機構(in vitro) 大気圧コントロールチャンバーを用いて培養Astに低酸素・再酸素化を行った。AQPの発現は、低酸素により著しく低下し、再酸素化により増強した。これらの変化に関与する細胞内情報伝達系は、現在検索中である。 以上のように、生理的状態におけるAQPの発現調節には、いくつかの細胞内情報伝達系が関与していることが分かった。また、病的状態においては、AQPの発現が劇的に変化することが分かった。今後、病的状態におけるAQPの調節機構をさらに詳細に検討し、in vivoにおける検討につなげていきたい。
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