脳浮腫は様々な病態に随伴して発症し、しばしば致命的となる。水チャネルであるアクアポリン(AQP)が脳浮腫に関与している可能性は示唆されているが、その発生機構は十分に解明されていない。本研究では、正常AstにおけるAQPの発現調節機構に関して、浸透圧変化に対するAQPの発現変化とそれに対する細胞内情報伝達系の関与に注目し、基礎的データを収集する。さらには、病的状態(脳浮腫)におけるアクアポリンの発現変化と細胞内情報伝達系との関係を詳細に検討することにより、AQP発現の調節を主眼においた新しい脳浮腫治療法確立を目指す。 平成16年度の研究目標は、1.低酸素状態におけるAQP発現調節機構(in vitro)、2.脳浮腫発生時におけるAQP発現調節機構、以上2点を掲げた。 1.低酸素状態におけるAQP発現調節機構(in vitro) 大気圧コントロールチャンバーを用いて培養Astに低酸素・再酸素化を行った。AQPの発現は、低酸素により著しく低下し、再酸素化により増強した。これらの変化には活性酸素やフリーラジカルが関与していることが分かってきた。 2.脳浮腫発生時におけるAQP発現調節機構 ラット中大脳動脈閉塞モデルやラット脳凍結損傷モデルにおいて、損傷直後にAQ発現は低下し、脳浮腫の発症と共にAQP発現が増強することが分かった。また、その発現は長期にわたっており、AQPが浮腫の治癒過程にも関与する可能性が示唆された。 以上のように、脳損傷時のAQP発現調節には、活性酸素やフリーラジカルが関与していることが分かってきた。今後、動物モデルにおけるAQP調節機構をさらに詳細に検討し、新しい脳浮腫治療薬の開発を目指す。
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