前立腺肥大症などの下部尿路閉塞により、尿道抵抗が増加した場合、膀胱平滑筋が代償性に肥大することは良く知られている。しかし、その状態が長期に渡れば、徐々に代償しきれなくなり、その収縮力は損なわれ、非代償期へと移行する。カルシニューリンは、カルシウム依存性脱リン酸化酵素であり、免疫抑制剤のターゲット分子として、また近年では心肥大の原因として注目されている。我々は、これまでの研究で、ラット下部尿路閉塞モデルを用いた実験において、カルシニューリンの発現が代償期に高く、非代償期になると低下することを明らかにし、更に、最近、膀胱平滑筋初代培養細胞にカルシニューリン遺伝子を組み込んだアデノウィルスベクター(Ad-CN)を導入し、培養細胞に肥大が誘発されることも確認した。これまでの実験により、膀胱平滑筋の肥大には、カルシニューリンが重要な役割を担っていることが示唆された。膀胱平滑筋初代培養細胞にカルシニューリンの遺伝子が組み込んだアデノウィルス(Ad-CN)を用いて肥大が誘発されることを確認したが、更に、カルシニューリン阻害薬である免疫抑制剤(FK506)を加えることにより、その肥大が阻害されることも確認した。また下部尿路閉塞による圧刺激のみならず、伸展受容体を介する刺激の関与も考えられるため、膀胱平滑筋初代培養細胞を細胞伸展システムを用いて伸展負荷をかけることにより、カルシニューリンが3時間後にはウエスタンブロティング法にて発現がコントロールに比べ増強していることが確認された。
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