研究概要 |
本研究は、電子透かしの安全性の評価に着目し、より現実に即した安全性評価基準を提案し、その評価基準のうえで優れた電子透かしコードを開発することを目的とするものである。今年度は、昨年度に引き続き、既存の安全性評価基準のもとでの未解決問題に取り組み、デザイン理論との関連性を見出すことにより、部分的な解決に成功した。また、その既存の安全性評価基準を包含するより一般的・汎用的な安全性評価基準として、新しい指標の設計に取り組み、そのために集合族間における半順序関係を定義した。具体的な研究実績は下記のとおりである。 1.ある符号のもとで、q人中少なくともp人は犯人であるというようなq人を見付けることのできるときに、その符号を"(p,q)-安全"と定義する。この定義のもとでの安全性の理論的限界について、既にいくつかの結果が知られているが、未解決な問題も多い。例えば、この[p/q]という指標のもとでの最良な符号が持つ具体的な指標の値を求めることは、結託の数が4人以上の場合においては、知られていなかった。今年度は、このような指標の上界の改良に取り組み、デザイン理論におけるブロックデザインを用いることにより、最良な符号が持つ指標の値を漸近的に特徴付けることに成功した。 2.昨年度の研究により、Secret Guessing問題における質問リストと、結託耐性を持つ符号には密接な関係があることを理論的に示したが、今年度はさらに一般化を目指し、より汎用的および統一的な電子透かしの安全性評価基準の考案のため、ある電子透かしが与えられたときに、その電子透かしを作成することのできる結託の集合からなる被疑結託族について、集合論的な形状に着目し、2つの被疑結託族間における半順序関係を定義し、その定義が電子透かしの安全性を評価するうえで適切な基準となり得ることを示した。この被疑結託族における半順序関係をもとに、今後符号間の順序関係を定義することにより、安全性評価の基準とすることが可能であると予想される。
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