研究概要 |
本研究では,ディジタル署名方式などの暗号核技術における結合機能や分割機能について考察を行っており,特に、有向グラフに対する推移署名方式に着目し、その定義、並びに、具体的な構成方法を検討し、構成した推移署名方式の安全性について考察を行っている。推移署名方式とは、グラフで表現できるデータに対するディジタル署名を生成する方式であり、かつ、推移性が成り立つものである。本年度は、ディジタル署名の代数的な性質の考察を進めるために、昨年度までに得られた、この推移署名に関する結果を発展させた以下のような研究を行った。 まず、ディジタル署名の代数的性質に関して、特に、有向グラフに対する推移署名方式と代数的性質の関係についての調査を通して、有向グラフに対する推移署名方式を構成できれば、逆数を計算することが難しいトラップドア付のアーベル群(ATGII)が存在することや、擬似自由ATGIIが存在すれば、有向グラフに対する安全な推移署名方式を構成できることが、最近の研究結果として解明されていることが分かった。 次に、これらの結果と昨年度構成した有向グラフに対する推移署名方式との関係を明らかにするために、有向グラフに対する推移署名方式の動作アルゴリズムに変更を加え、安全性の解析を行った。そして、この修正された推移署名方式において、有向グラフに対する推移署名方式が存在するための必要条件であるATGII自体が、その存在が知られていない群であるということとの関係について考察を行った。
|