研究概要 |
本年度も昨年度に引き続き,CNF論理式の最大充足化問題,すなわちMAX SAT問題に対する例題生成手法の基本的な解析を行った.具体的には各節にちょうど2つのリテラルがあるCNF論理式を対象とするMAX 2SAT問題をとりあげた. 昨年度に考案したMAX 2SAT問題に対する正解つき例題生成アルゴリズムによって生成される例題のNP困難性の理論的解析を,近似アルゴリズムにも適用できるように拡張することを行った.すなわち,昨年度示した,生成される例題の集合がNP完全である(厳密解を求めることが難しい)という証明に用いた手法を拡張し,ある程度の良さを持つ近似解を求めることも簡単ではないということを理論的に示した. 具体的には,各節にちょうど3つがリテラルからなる3CNF論理式の充足可能性問題からの還元を用いて,任意の3CNF論理式を2CNF論理式に変換すると,充足可能な3CNF論理式は例題生成アルゴリズムで生成できるものになり,充足不可能な3CNF論理式は例題生成アルゴリズムによって生成されず,しかも充足されない節数の最小値と極小な充足不可能な部分式の数の比がある値以下となる2CNF論理式になることを示した.このことより,考案した例題生成アルゴリズムによって生成された例題とそれ以外の例題を,ある程度の性能を持つ近似アルゴリズムを用いて判別できるとP=NPとなることを示せる.一般に,P=NPではないと考えられているので,このような性能の近似アルゴリズムがあるとは考えられない,すなわち,近似アルゴリズムにとっても,この例題生成アルゴリズムは簡単でない問題を生成できるといえる. この結果は,現在国際会議に投稿中である.
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