組合せ最適化問題に対する汎用アルゴリズムの開発を目指し、本年度は、昨年度に引き続き、資源制約スケジューリング問題(RCPSP)を中心に研究を進めた。RCPSPは、多くのスケジューリング問題を記述できる組合せ最適化問題であるが、従来研究されてきた定式化は比較的単純であったため、現実に現れる複雑な問題に十分対応できるものではなかった。そこで本研究では、作業の中断や並列処理を扱えるようにするなど、RCPSPの定式化を一般化し、タブー探索法に基づく近似アルゴリズムの開発を行った。アルゴリズムの基本的な枠組みは昨年度すでに完成しているため、本年度はとくに、重工業におげる実データを用いた計算実験を行い、問題のモデル化とアルゴリズムの改良を行った。扱った問題は鋳造ラインのスケジューリングであり、工程間の先行制約、炉や組枠などの資源制約に加え、溶解原料の特性や複数炉間の同期に関する制約を考慮しなくてはならない非常に複雑な問題となっている。本研究では、この問題を統一的な枠組みの中で扱えるようにするため、RCPSPの定式化に、新たに状態変数とよばれる概念を導入し、アルゴリズムの改良を行った。数値実験により、本研究で開発したアルゴリズムがスケジュールの質、計算時間の両面で実用的であることを確認し、最適化エンジンとして、まもなく実システムに組み込まれる予定である。 RCPSPの他には、ネットワークフロー問題の双対問題において、その目的関数を一般化した問題を考え、局所探索法に基づく近似解法を提案した。これは、ある種のプロジェクトスケジューリング問題や、サプライチェインマネジメントにおける安全在庫問題を含む問題と捉えることができる。今後、メタヒューリスティクスの手法を用いるなど、アルゴリズムの改良を行っていく予定である。
|