研究概要 |
量子計算機として実現の可能性が高いモデルを提案し,従来の計算モデルとの計算能力の違いを解析するのが本研究の主たる目的である.このため,3つの量子計算モデルを提案し,その能力の解析を行った. 一つ目は,量子有限オートマトンに従来の確率計算の手法を導入したもの(確率量子有限オートマトン)であり、このモデルを用いると、(1)ある特定の言語について、従来の量子有限オートマトンよりも誤り確率を低くできる。(2)ある特定の言語について、従来の確率有限オートマトンよりも状態数を少なくできる。(3)観測の回数を1回に制限すると、従来の量子有限オートマトンでは認識できない言語を認識できる。以上の3点を示した。 二つ目は、古典スタックを持つ量子プッシュダウンオートマトンであり、片側誤りの制約のもとで、従来の確率プッシュダウンオートマトンよりも真に能力が高いことを示した。つまり、(1)古典スタックを持つ量子有限オートマトンで、任意の確率プッシュダウンオートマトンをシミュレートできる。(2)従来の確率プッシュダウンオートマトンでは認識できないが、古典スタックを持つ量子有限オートマトンでは認識できる言語が存在する。ということを示した。 三つ目は、Golovkinsによって提案された量子プッシュダウンオートマトンについて、エラーなし計算の条件のもとで、量子プッシュダウンオートマトンでは計算可能であるが、従来の決定性プッシュダウンオートマトンでは計算不可能な関数があることを示した。これは、量子プッシュダウンオートマトンの能力が従来のプッシュダウンオートマトンより優れている可能性を示唆する結果である。 さらに、平成16年度に予定していたVLSI量子計算シミュレータの開発を前倒しして、本年度から着手し、いくつかの成果をあげている。
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