本研究においては、分散システムにおける耐故障性を有する基本アルゴリズムに関する研究を行った。主に3つの方向から研究を行い、いくつかの成果を得た。成果の概要は以下のとおりである。 1 自己安定に基づく耐故障性の実現 最適マルチキャスト通信を実現するにはスタイナー問題を分散システムで解く必要があるが、本研究では解のよさを最適解とのある一定の比率内に収まるような近似分散アルゴリズムを提案した。また提案アルゴリズムはどのような一時故障が発生しても自動的に正常な状態に回復する、自己安定アルゴリズムでもある。 2 コーラムによるPeer-to-Peer環境向け分散通信構造 Peer-to-Peer分散システムの一部が故障しても、残った計算機で通信を行うことで情報交換が可能な仕組みを提案し、オブジェクト検索用のプロトコルを提案した。 3 アドホックネットワーク向けの分散アルゴリズム研究 ネットワークトポロジが動的に変化しても、どの程度の変化量ならプロトコルが対応できるかを定量的に評価する理論的枠組みを考案した。そしてトークン巡回問題を例にして、トークン巡回に要するコストとネットワークの変化量との関係を理論的に保障した、アドホックネットワーク向けの自己安定分散アルゴリズムを提案視した。
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