研究概要 |
本研究の目的は,特徴的な構造を持つ論理関数の性質を用いてデータに存在する論理的、構造的な説明を与えるシステムを構築することにある.例えば分解可能な論理関数を用いた場合,概念を階層的な形で捉えることができるため,ルールはもちろんのことデータベースの属性間の階層的な構造も抽出することが可能となる.例えば,ある病気に関する診断データベースでの応用を考えた場合,属性間の階層的な構造は病気がどのようなプロセスを経て起こるかに対応すると考えられるため,本手法(構造的なデータ解析)は,より強い分析力を持つと言える.このように,従来は経験を摘んだ人間によってしか得ることのできなかった現象に存在するある種の構造を抽出することが可能となるため,上記のような医療分野のみならず,様々な分野(例えばエキスパートシステム構築の補助なども含まれる)において,本手法は有効であると考えられる. 今年度は特に,本システムの構築を考える上で現れる,諸問題に対する計算の複雑度を明らかにすることを目的に研究を行った.本年度における結果は特に,分解可能関数の中でも特にしきい関数へ分解可能な関数クラスに対する計算複雑度を明らかにした.しきい関数は現実に現れる現象を数多く説明できる関数であり,実際ニューラルネットはしきい関数の原理に基づき働いていることが知られている.また,これらのみならず経済ゲーム理論などの分野においても,投票ゲームにおける関数でしきい関数の形に分解可能なものがある.今年度は特に2-分解可能なクラスについて,しきい関数,正単調関数,(制約なしの)一般関数に関して調査を行い,それぞれ多項式時間アルゴリズム,もしくはNP困難性の証明を与えた.また一般関数の分解可能性における必要データ数の下限値に関する調査を確率的手法に基づき行った.
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