研究概要 |
平成15年度の研究計画は,未来開拓学術研究推進事業「外科領域を中心とするロボティックシステムの開発」と連携し,以下に示す2つの研究項目を遂行することである. 1.グリッド適応のための性能改善支援ツールの開発. 2.グリッドシミュレータの開発. 双方で得られた研究成果は論文誌および国際会議において発表し,高い評価を得た.さらに,連携の結果,多数の医用画像処理アプリケーションの開発を支援できた. 1.に対しては,並列アプリケーションの性能を改善するためにどのコードをどのように修正すべきか,という開発者の問いに直接応えるための手法を提案し,性能予測ツールPerWizとして実装した.PerWizの新規性は,改善効果の大きな箇所を改善手法とともに提示できることであり,典型的な性能改善手法をアプリケーションに適用した場合の性能(実行時間)を予測する.特に,ドミノ倒しのように改善効果が波及する箇所を自動的に検索することで,少ない修正で大きな改善効果を得る箇所を開発者に提示する.評価実験では,修正のための労力が同じであるにも関わらず,改善効果をおよそ3倍に向上できた. 2.に対しては,マスタ・スレーブ型プログラムがグリッドにおいて主流を占めることに着目し,マスタ・スレーブプログラムの性能を予測するためのモデルを開発した.これまでに開発した並列計算モデルLogGPSを拡張することにより,マスタにおけるメッセージ到着を検出するためのオーバヘッドをモデル化した.この結果,マスタ・スレーブ数および性能のトレードオフを理論上で解析することが可能になった.また,予測した実行時間の誤差は実際の実行時間に対して10%以内であり,予測精度が十分高いことも確認した.
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