既存ソフトウェアからのネットワーク対応コンポーネントの自動抽出に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15700036
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 鷲崎 弘宣 早稲田大学, 理工学部, 助手 (70350494)
• キーワード: ソフトウェア工学 / プログラム言語 / ネットワーク

研究概要

ソフトウェア部品としてのコンポーネントを開発・運用するための基盤となるソフトウェアアーキテクチャ体系が成熟しつつあるのに対して、同ソフトウェアアーキテクチャ上でコンポーネントを適切に再利用する仕組みと方法論が未成熟なため、コンポーネントの再利用は限定的な種類・利用方法に留まっている。そこで本研究では、既存のオブジェクト指向ソフトウェアを、最小構成要素であるクラス間の継承関係や参照関係、および、生成関係について静的に解析し、コンポーネントとして独立して再利用可能なクラス群の範囲と利用者にとって窓口となる1つのクラスを自動的に特定する手法を提案した。自動的に特定された範囲をコンポーネントとして切り出す際に、抽出元ソフトウェアにおいてその範囲を利用していた周辺部分を、得られる新たなコンポーネントを利用するように自動的に修正することで、コンポーネントと共にコンポーネントを利用するソフトウェアの例を得ることができる。本研究ではこのコンポーネント抽出手法を提案すると同時に、抽出・周辺部分を自動的に修正する機構を実装した。内部がコンポーネント化されていない複数のJava言語で記述されたソフトウェアについて本抽出機構を用いて抽出実験を行った結果、再利用性の高いコンポーネントをその利用例と共に自動的に数多く抽出できることを確認した。さらに、抽出して得られるコンポーネントをWebブラウザ上でネットワーク越しに遠隔実行し、動的特性を確認可能な試行機能を合わせて実現した。これらの成果は、ソフトウェア開発手法に関する国際会議において発表した。また、研究成果によって日本ソフトウェア科学会高橋奨励賞の受賞が決定した。実現したコンポーネント抽出/試行機構は、インターネットを通じて利用可能な形で公開した。今後、研究者および実務家による利用評価を通じて、実用的な機構として修正・拡張を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "オブジェクト指向クラス間依存解析に基づくコンポーネント抽出"コンピュータソフトウェア. Vol.21, No.2. (2004)
• [文献書誌] Hironori Washizaki, Yoshiaki Fukazawa: "Automated Extract Component Refactoring"Proc.of 4th International Conference on Extreme Programming and Agile Processes in Software Engineering. LNCS Vol.2675. 328-330 (2003)
• [文献書誌] Hironori Washizaki, Hirokazu Yamamoto, Yoshiaki Fukazawa: "A Metrics Suite for Measuring Reusability for Software Components"Proc.of the 9th IEEE International Symposium on Software Metrics. 211-223 (2003)
• [文献書誌] Hironori Washizaki, Yoshiaki Fukazawa: "Extracting Components from Object-Oriented Programs for Reuse in Memory-Constrained Environments"Proc.of First Workshop on Reuse in Constrained Environments. 1-3 (2003)
• [文献書誌] 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "オブジェクト指向プログラムのためのコンポーネント抽出型検索システム"情報処理学会オブジェクト指向2003シンポジウム論文集. 77-84 (2003)
• [文献書誌] 沖田直幸, 金澤典子, 小井土亨, 鷲崎弘宜: "ライトニングトークス:パターンとソフトウェアに関するライトニングトークス"情報処理学会オブジェクト指向シンポジウム2003論文集. 243 (2003)
• [文献書誌] 羽生田栄一, 久保淳人, 鷲崎弘宜: "ソフトウェアパターン関連ツールデモ"情報処理学会オブジェクト指向シンポジウム2003論文集. 245-246 (2003)
• [文献書誌] 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "ソフトウェアパターンランゲージ工学に向けて"情報処理学会ウィンターワークショップ・イン・石垣島論文集. 75-76 (2004)
• [文献書誌] 久保淳人, 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "ソフトウェアパターンの自動的な体系化の試み"情報処理学会ウィンターワークショップ・イン・石垣島論文集. 73-74 (2004)
• [文献書誌] 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "WWWからのオブジェクト指向プログラムの収集と検索"日本ソフトウェア科学会第20回大会論文集. 1-5 (2003)
• [文献書誌] 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "ソフトウェアパターン研究の現在と未来"情報処理学会研究報告. Vol.2003, No.55. 31-38 (2003)
• [文献書誌] 星大樹, 鷲崎弘宜, 深澤良彰: "柔軟なコンポーネント間接続方式の提案と実装"電子情報通信学会信学技報. SS2003-22. 37-42 (2003)