今年度は双方向伸長可能、すなわちデータの最後尾(後方)から圧縮データを読み込んでも逐次伸長可能な圧縮法について検討を行った。 1.双方向伸長可能なHuffman符号が提案されているので、それを改良して誤り回復を行う手法を提案した。双方向伸長可能なHuffman符号では前方から伸長可能な圧縮データと後方から伸長可能な圧縮データをシフトさせて排他的論理輪を取っているため、シフトの大きさが大きい場合には生じた誤りまでの前方と後方からの伸長結果に重複が生じる。この重複を利用して誤りの位置を特定し、それを除去することで誤り回復を行う。誤り位置の特定を容易にするため、Huffman符号の符号化表に元データに存在しない記号を含め、伸長の際にそれが出力されることによって誤り検出を行う手法を加えた。得られた成果をまとめて口頭発表を行った。 2.Ziv-Lempel符号の一種であるLZ77符号において双方向伸長可能な手法を提案した。LZ77符号では符号化地点の一定記号数前までの記号列を参照して圧縮するが、この参照した記号列も更に前の記号列を参照しているため双方向復号は一般的にできない。提案手法ではこの参照の範囲に制限を設け、参照の範囲が一定範囲以内に収まるようにした。これにより、この一定範囲分を収容可能なバッファを用いることで双方向の伸長を可能とした。 3.上記2.と関連して、Ziv-Lempel符号における誤り回復手法を検討した。同符号の圧縮データ中には誤ると伸長データに大きく影響を及ぼす部分と誤りの影響が比較的少ない部分が存在する。本手法ではこの誤りによる影響が大きい部分を重要な部分と考えこの部分を他よりも強く誤りから保護する符号(不均一誤り保護符号、略してUEP符号)を適用することを提案している。得られた成果を学術論文にまとめて学会誌に発表した。
|