研究概要 |
IPネットワーク上でQoS(Quality of Service)を制御する技術として,ルータなどのネットワーク機器を高機能化する手法や,アプリケーションに制御機能を組み込む手法等が多く提案されている.しかし,インターネット上でのサービス提供を考えた場合,これらの手法には,規模適応性に欠けるという問題があった.そこで本研究では,QoS管理フレームワークを規定することにより,フィードバック型の簡易な制御,集中管理を必要としない自律分散制御の実現を目指す.本フレームワークでは,インターネットの構成要素を,サービスを提供するサーバ,同一の管理ポリシに従って運用されるローカルネットワーク,グローバルインターネットの3種類に分類し,それぞれに対してQoS制御機能を定義する. 本年度は,システム管理アーキテクチャを提案するとともに,サーバにおけるアプリケーションレベルのQoS制御手法の検討を行った.アプリケーション例としては映像配信サービスを取り上げ,実際にQoS制御機能を実装することにより,その実用性を検証した.具体的には,以下の3種類の機能を実現した.(1)システム環境に応じて動的に変化する制御ルールを構築する機能.(2)サービスのコンテンツに応じたQoS制御機能.ここでは,主観評価実験により,映像のコンテンツに対するQoSパラメータの影響度合いを重回帰分析により定式化した.(3)映像の視聴形態に応じたQoS制御機能.ここでは,PCモニタ上のマウスイベントを検出することにより,ユーザの視聴形態を判断した. 実装した映像配信システムを利用したユーザ実験を行い,これらの機能が,ユーザの映像に対する主観品質を大きく向上させることを確認した.今後,これらのアプリケーションレベルのQoS制御とネットワークレベルのQoS制御を組み合わせることにより,さらなる品質向上を検討する必要がある.
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