研究概要 |
本研究では,均質かつ静的な(実行時の構成変更を考えない)実行環境だけを対象にするのではなく,実用的な観点から,ノードの増設・撤去時においても設定変更や再チューニングなどの作業を必要としない,自律的な実行環境の構築を図った.特に,分散ファイルシステムを効率的に運用するためには,利用状況の変化を詳細に分析することが求められるため,このような管理コストの軽減とさらなる高速化を目指して,新しいサーバレス型分散ファイルシステムの開発を行った. 1.方式設計:実行環境の変化に対し高い適応性を有し,同時に高速なファイル入出力性能を実現するためのデータブロック再配置方式について詳細な検討を行った.具体的には,ストライピングを行うサーバレス型分散ファイルシステムに協調型キャッシュシステムを統合するアルゴリズムを検討し,定性的な比較と評価により方式の細部を決定した.また,管理機構を分散化・多重化するための機構及び制御プロトコルについても検討した. 2.シミュレーション環境構築およびアルゴリズム評価:汎用システムレベルシミュレータ上に最小規模の仮想分散処理環境を構築し,1の方式の定量的評価を行った.イベント単位で行うシミュレーションにより,1の方式の動作を短期間で確認した. 3.評価環境構築:検討した方式の詳細な評価を行うために,実際の利用状況を想定した評価環境を構築した.ここでは4台の64bitデュアルプロセッサPCをギガビットイーサスイッチ経由で相互接続する小規模な分散処理環境を構築した.また,この環境で動作させるOS,および評価用の応用プログラムも作成した.この応用プログラムとしては,数値計算だけではなく,複雑なデータ構造を用いる非数値計算プログラムも用意し,性能評価を行った.
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