研究概要 |
ピアツーピア分散処理環境において,ノード数が増減した場合でも設定変更や再チューニングなどの作業を要しない,自律的な分散処理環境を構築することを目的として,新しいサーバレス型分散ファイルシステムの開発を行った.2年計画の最終年度である今年度は,以下の2点の作業を行った. (1)ピアツーピア分散処理環境における再配置効果の検証 前年度に構築した評価用実行環境と,今年度に開発した評価用の応用プログラムを用いて,より詳細な評価を行った.具体的には,ノード台数やノード負荷の変化のように,実行環境が変化することへの適応性,及び実際の応用プログラムを実行した場合の再配置効果についての検証を行った.その結果をもとに,ノード間の情報交換プロトコルの最適化を行った.また,本研究が対象とする環境の特性を考慮し,(a)個々のノード性能の非均質化,(b)ノード数の増加による管理機構の負荷変化,等が全体の性能に与える影響についても評価を行った.その結果,ピアツーピア分散処理環境上に構築する分散ファイルシステムにおいても,本方式によって,ノード間のデータ移動量を抑え,オーバヘッドを大幅に削減できることが確認できた. (2)応用プログラムインタフェース(API)の確立 データブロックを効率良く再配置するためのAPIを設計した.ここでは,応用プログラム側から提供できるヒント情報をシステム側へ通知できるよう検討した.この情報としては,応用プログラムが扱うデータ構造から導かれるような静的にアクセスパターンを予測できる情報,及び再配置の優先度に関する情報を考案した. これらの結果,高速化を図る「協調型キャッシュシステム」と,耐故障性・環境適応性の向上を目的とした「データブロックの複製・再配置機構」の2つの機構を有機的に結合することができた.
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