移動先でネットワーク環境を柔軟に構築できる無線LANがユビキタス環境の通信基盤技術として注目されている。しかし、無線LANデバイスは、多くの電力を消費する点から、小型携帯端末の携帯性及び利便性を大幅に低下させる要因となっている。このことから、無線LANデバイスの省電力化は、快適なユビキタス環境の実現において解決すべき重要な検討課題である 本研究課題の目的は、無線LANデバイスの省電力化を実現するシステムソフトウェアを研究/開発し、その有効性を実際の計算機環境を用いて明らかにすることにある。省電力化の基本的なアイデアは、無線LANデバイスが提供するDOZE状態(通信は行えないが低消費電力でデバイスを稼動できる状態)を積極的に用いて、無線LANデバイスの不必要な電力消費をカットすることである。 本研究は現在も継続中であるが、これまでに以下のような成果を得ている。(1)利用する通信プロトコル内のトランスポート層の情報を用いてDOZE状態を適切に設定する状態制御機構と、(2)データ転送を低消費電力で実現する通信制御機構、を提案した。また、それらのプロトタイプシステムを構築して基礎的な評価を行った。結果から、本手法を用いることにより無線LANデバイスにおける電力消費を、従来手法と比べて最大約30%削減できることが確認できた。本結果は基礎的な実験により得られたものであり、今後は実際の環境における提案方式の有効性を確認していく予定である。
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