研究概要 |
本研究は,Java等のオブジェクト指向型言語を利用する場合等,ガーベジコレクションも含む動的記憶管理が必須となるグローバルコンピューティングを効率的に行えるように,動的領域管理と連携する新しいタイプのタスクスケジューリング手法CP/MMを提案するものである.研究の初期段階として,今年度はタスクスケジューリングシステムをグローバルコンピューティング環境で正しく評価できるようにすることを目的とし,既存の学内テストベッドシステム(九州工業大学内の飯塚市と北九州市の32km離れた2つの都市に分散したテストベッドシステム)を整備・拡張して有効にApGridに接続し,ネットワーク負荷やプロセッサ負荷を測定できるシステムを構築した.今回申請した科学研究費のほとんどは,これらの主要設備に充てている.またGlobus Toolkitの整備も行い,ApGrid等の実際のグローバルコンピューティング環境でも評価が行えるように準備を整えた.調査の結果,本タスクスケジューリングシステムをGlobus Toolkit適用することは簡単であることが分かったため,この部分の実装は後にまわすことにして,今年は提案手法の基本的な性能の評価を行った.実験では,PCクラスタ上で動作させた実際的なアプリケーションとテストベッド上で動作する複雑な依存関係を持つテストプログラムの2種類に対し,提案手法を組み込んだタスクスケジューリングシステムを用いて動作させ,評価を行った.その結果,CP/MMを用いた場合,他の既存の手法と比較して,優先順位の高いタスクの実行が記憶領域管理の悪影響を受けずに済み,効率的に並列分散実行できることが分かった.特にクリティカルパス長が比較的長いアプリケーションにおいてこの傾向が顕著であることが分かった.この結果は,SAINT2004 Workshopにおいて発表した.
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