筆跡情報を利用する秘匿通信について議論を行ない、筆跡情報に対してステガノグラフィを構築する手法を提案した。また、筆跡情報を利用したステガノグラフィを携帯端末上に実装し、筆跡情報を利用した秘匿通信が行えることを示した。 提案する筆跡情報を利用したステガノグラフィを用いた秘匿通信は、以下のように行われる。まず、送信者が、手書きの筆跡を、筆点座標に符号化したカバーデータとなる筆跡情報を取得する。情報の送信者が、情報を埋め込むためのステゴ鍵を利用して、カバーデータに送信する情報を埋め込んだステゴデータを作成する。ステゴ鍵は、送信する情報を筆跡の変化量に符号化するコードブックと、カバーデータの筆跡情報の任意の点の中点に埋め込む情報を符号化した変化量に応じてその中点を移動させ、移動した中点をカバーデータに追加するアルゴリズムである。また受信者は、送信者から情報が埋め込まれた筆跡から情報をとりだすステゴ鍵をあらかじめ共有しておく。 送信者は、情報が埋め込まれた筆跡情報を受信者に送信する。受信者は、あらかじめ共有しておいたステゴ鍵で埋め込まれていた情報を取り出す。受信者と送信者の間で交換したい情報を筆跡に埋め込み交換することが出来るので、筆跡を利用した秘匿通信が可能になっている。 筆跡情報を利用した秘匿通信が一般に利用されているシステムで動作することを示すために、提案した筆跡情報を利用したステガノグラフィの手法を携帯型端末上に実装を行った。現在普及している携帯端末(PDA)の多くは、液晶タブレット等を利用したペン入力機能を持ち、なおかつ移動体通信機能を持っている。そのために、携帯端末で動作する手書きを利用したシステムは多数利用されている。よって提案した筆跡情報のステガノグラフィを利用した秘匿通信は、手書き機能を持つ携帯端末上で、有効に利用される。
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