申請者は本年度、本研究課題の準備を行い、研究作業の一部に着手した。準備としては学会に参加しての情報収集、書籍の購入が挙げられる。最新で良質な情報により、今後の研究の進行が支援され得ると考えている。 まず本研究課題で申請していたネットワーク機器を購入し、研究課題実行のための基盤となるネットワーク実験環境を用意した。さらに膨大な実験結果を蓄積するためのデータ保存環境も整えた。これらは申請者の所属する研究室が所有する機器と組み合わせて、多様なネットワーク実験に用いることが可能な状態となっている。 研究成果としては、まず一致性保証のためのファイル属性情報の交換について、効率的な方法を明らかにした。インターネット上でソフトウェアを公開している組織では、ミラーサーバと呼ばれる複製を配布するためのサーバを用意していることが多い。しかしながら、その大量のソフトウェアの複製同士で内容が一致していることを確認するためには手間がかかっていた。本研究ではファイルの属性情報だけをサーバから取得し、クライアント間で共有することにより、効率的な複製の一致性を確認する方法を提案した。課題は残されているものの、トラフィックと一致性の点で概ね良好な結果が得られた。この成果を国際会議CIIT2003で発表することができた。 また複製の更新を高速に行うため、並列ダウンロード技術に注目した。従来の並列ダウンロード技術は、ピアツーピアネットワークのように遅延や帯域が変動する不安定なネットワークではあまり有効ではなかった。そこでネットワーク環境の変動にも適応できる新しい並列ダウンロード法を提案し、有効性を確認した。この手法により、不安定なネットワークにおいてもより高速で安定したダウンロードが実現できる。この成果は国際会議ADSN2004で発表予定である。
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