本研究では、デザイナのイメージの発想という創造的能力を支援することのできる3次元服飾デザインシステムの構築を目的として研究を行った。現在、アパレルCADは広く利用されているが、衣服のデザインは依然として手書きによるスケッチ画が主流である。アパレルCADはが利用されるのは、スケッチが完成した次の段階であるパターンメイキングからである。本研究は、デザインプロセスの支援を対話的な3次元コンピュータグラフィックスおよび布のシミュレーションなどの技術を利用して行おうとするものである。 本研究では、特に対話性を重視し、頑健な布のシミュレータを作成した。単純なバネー質点モデルによって布のモデルを構築すると、マウスなどによってわずかに強い力を加えるだけで発散する場合がある。この問題に対して、sIGGRAPHで発表されたchoiらのモデルの理論を実装することにより、マウスによるインタラクションによって発散することのない安定な布のシミュレーションを実現できることを確認した。衣服は、左右の対称性を持つことが多いことから、Loop細分割ではなくCatmull-Clark細分割を利用して10数個程度の衣服モデルの作成を行った。また、研究費によって購入したプロジェクタ等の機器により、ホワイトボード上に投影したモデルを直接操作し、その有効性を確認した。このようなシステムは、ある程度のデザイン後の衣服を複数人で確認し、さらに詳細を変更する際などに有効であろう。 今後の研究としては、作成した3次元衣服モデルからの自動的なパターンメイキング、より実際の布らしい振る舞いをするモデルの構築、よりデザイナの発想を支援するようなインターフェースの構築などがあげられる。
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