研究概要 |
計算機のマルチメディア化により,様々な情報機器の間で音声・映像等のデータをやりとりする機会が増えてきた.しかし,マウスやキーボード等を使った機器間でのデータのやり取りは,コンピュータに慣れていないユーザにとっては非直感的で把握し難いものである.このようなデータの操作をユーザにとって直感的で分かりやすいものにするためには,データや入出力インタフェースをどのような概念モデルとしてユーザに理解させるか,またその理解に要するユーザ負担の軽減が重要である. ある道具を学習負担なしに利用するためには,その道具そのものがどう使われればよいのかという情報を強く発していなければならない.このような特性はアフォーダンスと呼ばれ,例えばハサミやピンセットでは,二股の先端を持つという形状が物体を挟むことをアフォードしている.多くの人々に利用されている既存の道具はよいアフォーダンスを持っていると同時に,操作に関するメンタルモデルが幼少の頃からユーザの中に形成されている.加えてこのような道具を使用する際,微妙な操作の状態がユーザの手指に反発力や触覚としてフィードバックされており,この反発力・触覚が対象物体の性質を知る上で非常に重要な手助けとなっている.また道具はそれ自体で完結した入出力の双方向性をもっており,その使用方法が手先の感覚と共に身に付いているものである. そこで,本研究では日頃使い慣れた道具の形状を有する操作デバイスを構築し,ユーザがその道具の持つアフォーダンスや過去の使用経験を利用し,操作デバイスの使い方をよりスムーズに把握することが可能になることを確認した.また,形状だけでなく実際の道具と同様の触覚フィードバックを付加することで,実体を把握しにくいデジタル情報を可触化するとともに入力操作と出力確認を併せ持つ把持型のデバイスを実装した.
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