研究概要 |
(1)道具型I/Fを利用して,CDや本など実環境の様々なオブジェクトから,そのオブジェクトにバインドされた楽曲,文章,画像などのデジタルデータを取り出し,スピーカやプリンタなどに出力するシステムを構築した.実環境のオブジェクトにRFIDタグを取り付け,道具型I/Fに非常に近接したタグを認識可能なRFIDリーダを装着することで,道具型I/Fと接触しているオブジェクトを識別した.また,識別したオブジェクトのIDに対応したデータを,ディスプレイやスピーカ,プリンタなどに転送するプログラムを作成した. (2)スポイト型の道具型I/Fの側面にペルチェ素子を取り付け,吸い取ったデータの新旧に応じて,新しいデータの場合は「熱く」,古いデータの場合は「冷たく」,スポイト側面の温度が変化するシステムを構築した.実際に被験者に使用してもらったところ,それぞれのデータの新旧を即座に認識することができた. (3)ピンセット型とスポイト型の道具型I/Fの評価実験を行った.日頃PCを使っている学生とPC初体験の主婦を被験者とし,ディスプレイに表示された楽曲データをスピーカで再生するという操作を行ってもらった.市販のミュージックプレイヤー・アプリケーションをマウスを使って操作してもらう場合と,道具型I/Fを使って操作してもらう場合で比較した.学生の被験者では,操作時間はマウスを使ったほうが早かったが,操作の楽しさという点で道具型I/Fが支持された.主婦は,マウスを使った操作は達成できずギブアップしたのに対して,道具型I/Fを利用した場合は,試行錯誤することでタスクを達成することができた.この評価実験から,道具の形と触覚がユーザのメンタルモデルの形成を助けることが分かった. (4)スポイト型の道具型I/Fの他に注射器の形状をした道具型I/Fを構築した.このデバイスでは,注射器のピストン部分を引くとデータが吸引される.吸引されたデータ量が増加すると,ピストンを引っ張る際に必要な力が増加するような力覚機構を導入し,どの程度多くのデータが吸引されているのかを触覚として提示した. (5)注射器型の道具型I/Fの内部にノック式の力覚機構を導入した.これにより,注射器を振ると内部のおもりが「カチカチ」と注射器の上底・下底にぶつかり,データが中で動いているような力覚を提示することができた.また,ノック機構の下底にスイッチを付けることで,注射器を振った回数を検出できるようにし,その回数に応じて内部のデータを結合させたり,ランダムに並び替える処理を行った.このノック機構を導入することで,データが中で動いているという感覚を簡単に提示することができた.
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