研究概要 |
ある3次元形状を表現する陰関数をその表面点群から生成するとき,最大の問題となるのは計算量と消費メモリの増大である.例えば3次元形状計測装置により得られる点群は数万点に及ぶことが多いが,この場合,その点数の2乗に比例する要素数を持つ行列を生成し,さらにこの行列を係数行列とする大規模な連立1次方程式を解かなければならない.最も典型的な直接解法では計算量は点数の3乗に比例する.本研究ではこの問題点を解決するために以下の構成により陰関数を生成する手法を用いた.まず,生成される係数行列が疎行列となるような陰関数モデルを採用することでメモリ消費量の大幅な削減を図り,さらに,連立1次方程式の解法として前処理付きの反復解法を適用することで,計算量の削減を図った. ここでポイントとなるのは,係数行列の特徴に応じた前処理と反復解法をどのように構成するかということである.まず前処理としては,不完全Cholesky分解,および可変的前処理が適することが確認された.また,反復解法としては最も単純な共役勾配法(CG法),および収束が保障される一般化最小残差法(GMRES法)による高速化の実現が可能となる. 併せて,ウェーブレット変換による多重解像度表現の可能性を勘案し,そのプロトタイプとして四辺形メッシュで構成される3次元形状の多重解像度表現を実現した.これは,リフティングスキームと呼ばれるウェーブレット構成法を用いることで実時間での3次元形状の解像度変更を実現することを特徴とする.これは例えば3次元形状計測装置によって密に得られた点群を,その形状をできるだけ保ったまま疎な点群に変換するという目的で利用されるものである.
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