研究概要 |
本年度の成果は,以下の3点である. (1)ソフトウェアエージェントと人間の協調機構の設計:自律性の調整機能に基づいてソフトウェアエージェントと人間の協調機構を提案し,その応用として,複数オークション入札支援システムを試作し,ワークショップJAWS2003(11.研究発表には紙面の制限から掲載していない)で研究発表を行った.実世界の電子商取引において,ソフトウェアエージェントを用いる利点は,動的で広大なインターネット空間において,人間よりも,効率的に商品を探し出し,適切なタイミングで入札したり,取引することができる点である.しかし,人間の質の高い意思決定とエージェントのタイミングの良い意思決定はトレードオフの関係にある.そこで研究では,人間がエージェントと協調的に入札をスケジュールするアルゴリズムを提案した. (2)電子商取引メカニズムの理論的な設計:複数の電子商取引メカニズムをミクロ経済学を用いて厳密にモデル化した.一つは,非対称情報化において専門家と素人が存在する場合の単一財/複数財オークションの設計である.本成果は,国際的な研究者から継続的に高い評価を受けており,AAMAS2003とAAMAS2004に受理されている.もう一つは買い手と売り手の提携メカニズムである.いくつかの効率的なアルゴリズムを提案し,3本の論文誌にまとめた. (3)経済モデルに基づく情報共有システムと教育支援システム. 本研究の派生的な成果として,電子商取引で用いられる経済モデルを吟味し,情報共有や教育支援に応用した.一つは,経済モデルのインセンティブメカニズムを情報共有に応用し、特許や第66回情報処理学会全国大会で発表を行った.もう一つは,経済モデルにおける価格の推移を定性推論で行い,経済学の初心者への教育システムとして実装した.本成果は高く評価され,今夏の米国人工知能国際会議AAAI2004で発表予定である.
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