研究概要 |
本研究の目的は工業生産物の設計者の意図を表す機能的知識記述枠組みを実用レベルにまで展開することである.具体的には,機能的設計知識の中で機能を達成する部分機能系列を表す「機能達成方式知識」を主な研究対象として,(1)故障を防ぐなどの役割を果たす補助機能の規約を明らかにする,(2)設計知識の収集と蓄積を支援する計算機システム(設計知識記述支援環境)を実現することを目標とする.前者は故障を事前に防ぐなどの補助的役割を果たす機能のことをいうが,その記述には異常(故障)状態の記述を行う枠組みが必要である.後者は,企業内に散在する情報源からオントロジーが定める規約に則って知識を記述することを支援する機能を持つ. 本年度では前者の目標をほぼ達成した.まず生産上の機能を達成するための各種の補助機能を収集した.実際の生産システムや生産装置の不具合情報などから補助機能とそれが防いでいる不具合について整理を行った.次に,得られた補助機能をいくつかの種類に分類した.これは,補助機能が不具合連鎖のどの部分に対して影響を与えているかで分類することができ,不具合状態の発生を事前に防止する機能,不具合状態の発生は許容しその影響伝播をなくす機能などの5種類に分類した.さらに,得られた記述の枠組みをオントロジーとして計算機的に定式化した.設計者によって意図されている「機能」と意図されていない「不具合」との関係性をオントロジーとして明確にした.特に,補助機能が不具合に与える影響について,その記述要素を明らかにした.オントロジーはオントロジーエディタと呼ばれるオントロジー構築環境を用いて記述された.得られたオントロジーの規約に則って半導体生産プロセスなどにおける補助機能を実際に記述し,補助機能の設計意図ぶ記述できることを確認した.
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