研究概要 |
本年度は,学習過程を学習システムのインタフェースの構造の変化として記述した数理的モデルの構築を行った.具体的な成果は以下の2点にまとめられる. ●チャンネル理論に基づき<人-学習システム>間のインターフェースIの構造変化をclassifier systemをもとに数学的に形式化した. ●<学習システム-環境>間にあるインタフェースIIの構造変化を,その間に流れる情報の数理的分析により,情報構造の<部分-全体>の関係として記述した.その上で,学習を環境からの情報の獲得としてではなく,環境との間のインターフェースの変化として考える見方の可能性を示した. 詳しくは,Hollandの提案した機械学習システムであるClassifier System(CFS)を学習過程の分析対象とし,従来の機械学習システムの設計思想をその情報構造に注目する立場から記述した.そして,<人間-学習システム>と<学習システム-環境>間にあるインタフェースI・IIをある種仮想的な情報の場(物理学における場の考え方に類似したもの)と考え,この場を介して情報の交換が行われる過程において,情報構造の<部分-全体>関係の段階的変化が起こっており,それがインタフェースの構造の変化として形式的に記述されることを示した. この過程の概略を4段階にまとめて図式的に書けば以下の通りである: i:人【tautomer】環境,ii:人間【tautomer】学習システム【tautomer】環境iii:(人間⇒学習システム)【tautomer】環境,iv:(人間⇒学習システム←環境). ここで【tautomer】と⇒はチャンネル理論における写像の組と情報射をそれぞれ表している. また,同様の議論がニューラルネットワークの学習過程においてもモデル化できることも示し,また,工学における公理的設計論の一つである一般設計学およびニューロ多様体との関係を明らかにした.
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