研究概要 |
本研究課題では,我々がこれまでに提案してきたセルオートマトンのルール系列による,ディジタル信号の完全可逆記述に関する研究である.特に,本年度の研究計画の主な目的は,あるディジタル信号(本研究では,音信号や発話データ)を記述する2ルールから成るルール系列から生み出されるアトラクタ構造の特徴を解析することであり,以下に与える成果を学術論文・国際会議で報告した. 1.本手法では,各時間ステップでの音信号の時間発展を,セルオートマトンの2ルールの組み合わせで記述する.記述効率(データ量の意味で)向上のため,Wolframの分類のクラス3のルール(カオス的ルール)とクラス1もしくはクラス2に属するルール(非カオス的ルール)の組み合わせで記述することが効果的であることを明らかにした.更に,このような場合に,オリジナルの音信号がいずれのルールによって復元されるかについて研究した.その結果,クラス1もしくは2に属するルールで復元されていることが分かった.つまり,カオス的ルールは,データ記述の際にパターンの多様性を生み出すこと,一方,非カオス的ルールはパターンダイナミックスの安定性をもたらすこと,を明らかにした. 2.記述効率を向上するために,2値化データの表現方法の違いについて,(a)単純な2値化,(b)単純な2値化+XOR,(c)バイナリコーディング,及び(d)バイナリコーディング+XOR,の4種類について研究を行った.その結果,(b)の場合でルール(90,180)の場合が,ほとんどの場合(JPOP音楽を除いて)有効であることが分かった. 3.離散状態であるセルオートマトンを連続状態へ一般化した場合の一例として考えられる,ロジスティック写像のパラメータを時間的に変化さぜることのダイナミックスへの影響を研究した.これは,ルールを時間的に変化させることに対応すると考えられる.
|