研究概要 |
本研究では衣服が人体に与える圧力すなわち衣服圧に着目し,衣服圧が人体に加わった場合の生理心理的変化をシミュレート可能なモデルを構築することが目的である. 本年度は昨年度に引き続き人体のモデリングを中心に研究を行なった.昨年度の研究では3次元計測により人体表面形状を取得し,生理学的知見に基づき経験的に脂肪・筋肉等の皮下組織をモデル化した.しかし,検証の結果,この手法で作成されたモデルには誤差が含まれることが判明した.そこで今年度は実際の皮下組織の構造に忠実な人体モデルを作成するために,人体MRI画像から皮下組織を推定し人体モデルを構築することを試みた.さらに皮下組織の材料特性は,実際の胸部形状に一致するような物性を同定した. 構築されたモデルの妥当性を検証するために変形シミュレーションを行なった.シミュレーションでは立位時とファンデーション着用時の変形形状,接触圧を推定した.接触圧を推定する際には,構築した人体モデルとファンデーションモデルとの間で接触問題を解くことで求めた. シミュレーション結果を3次元計測装置とエアパック式圧力測定装置を用いて得られた結果と比較することで検証を行なった.その結果,立位時の人体形状はほぼ実際の形状に変形することが確認された.一方ファンデーションを着用した場合のシミュレーション結果は,ファンデーションを接触させることで形状が変形することが確認されたが,接触処理をする際に含まれる誤差等から実際の形状との間に大きな差異が生じた.また,接触に関しても実際の値に比べて高い圧力値が推定された.このことから,今後は人体モデルと接触物体との間の接触アルゴリズムを検討することが必要であることが考えられる.
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