平成15年度は過去の時系列パターンから、取引に関するシグナルを学習する適応的ルール生成のシステム開発、および、人工市場形成の基礎研究を中心に行い、さらに、従来の研究の内容をまとめた。 適応的ルール生成システムの開発では、従来、過去の変動パターンと学習パターンのマッチングに膨大な処理時間がかかり、高速な実行の妨げとなっていたが、パターンマッチング部分にダイナミックプログラミングの手法を適用し、高速処理が可能となった。これにより、今現在は市場の価格を見て取引を行う単一のトレーダのみにより構成されるシステムを、多数のトレーダが売買を行うマルチトレーダシステムへと拡張することができる。また、時系列にフラクタル自己相似性を仮定した場合に、部分的時系列から求めた変動学習パターンを大域的時系列へ適用することが可能となるようにシステムの修正を行った。 将来、ルール生成システムを仮想市場のトレーダとして用い、価格形成過程の分析を実施するために、単純なトレーダモデルを用いた人工株価市場、人工オークション市場、人工プライシング市場の価格形成と発生される価格時系列に関する考察を行った。人工株価、プライシング市場の結果より、仮想市場の価格形成に関するパラメータ等を変更することにより得られる結果に大きな違いが現れ、特に株価市場では、設定により、カオス的、あるいはフラクタル的株価が発生することを示した。また、オークション市場における分析では、トレーダの利益追求に関する性質の違いにより、入札行動とその結果得られる利益に大きな差が現れ、他者の利益追求を妨害するようなトレーダがオークション市場に参加した場合、取引が行われる価格の平均値が上昇することを示した。
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