研究概要 |
平成15年度はまず、「触覚」と「視覚」の感性情報およびこれらの知覚・感覚の構造について理論的検討・整理を行った。次に、様々なテクスチャ刺激に対する感性情報抽出のための補助的な質問紙調査を行い、加えて異なる感性情報を含むテクスチャ刺激へのモダール間に異なる反応速度を調べる予備的実験を行った。それぞれの詳細を以下に記す。 「触覚」と「視覚」の感性情報および知覚・感覚の理論的検討については触覚的感覚を視覚的に表象する「肌理の構造」について、触覚的肌理の要素と視覚的肌理の要素の知覚における生物学的な知見(E.Rubin,1921)を確認した。よって実験では、肌理の構造的な要素の違いを表象した2種類の異なる処理を加えた画像を作成し視覚刺激として用いることで比較検証した。また、感性情報としての印象形成に関して、視覚的イメージが触印象によって換気される場合がこの逆より容易であるというA.Sophie Rogers(1923)の実験結果をふまえ反応速度実験の計画を立てた。 感性情報抽出の予備調査では6種類の異なる刺激素材を選定し、理論的研究から示唆された視覚刺激の持つ肌理の構造的な要素の違いを、2種類の異なる画像イメージを用いて調査を行った。この結果のデータを因子分析と分散分析にかけたところ2種類の画像の印象伝達において特徴的な違いが明確になった。 次に、同じ画像を用いて、感性情報としての印象形成に関して、触印象を伴う刺激を視覚と触覚という異なる入力器官を用いて同定判断を行い、反応時間を調べた。この際、同時に行った質問紙による調査ではモノクロ画像の同定判断が圧倒的多数で難しいと答えた。しかし、反応速度のデータからt検定を行った結果では有意差は見られなかった。つまり今回使用した視覚刺激の持つ肌理の構造的な要素の違いには大きな印象の違いを引き起にしたとしても、我々の知覚の反応時間にそう大きな差が見られない事を示唆している。 本年度は、研究計画の理論的研究と実験の結果を得た。来年度はこの結果を発表し、本実験として、再度考慮すべき点を修正して実施し研究報告書としての論文投稿を行い公的に発表する。
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