研究概要 |
本研究は,異なる複数のルールに従うデータが混在するといった特徴を持つデータベースからの知識獲得手法の開発を目的としている.平成15年度は,マルチエージェントの行動制御のために開発した自動グループ構成手法(Automatically Defined Groups ; ADG)のデータマイニング分野への応用について検討を行った.具体的な研究計画は次の4点であった.1,ADGに基づく新たな進化的ルール抽出手法の提案.2,ADGにおけるグループ操作,および最適なグループ構造への収束条件などの検証.3,医療データの入手,整理,および各種属性値の傾向の把握.4,ADGに基づくルール抽出手法を医療データ処理に適用するための記号設定の検討. まず1,2に対しては,エージェント群によるデータ集合の分割と各部分データ集合からのルール抽出という概念を導入し,ADGに基づいた新たなルール抽出手法を提案した.関数同定問題により検証を行った結果,提案手法はデータベース中に存在する複数のルールを自動的に抽出でき,また抽出した複数のルールには各ルールの採用頻度や予測精度に応じた優先度が付与されるため,知識獲得手法として有効であることが分かった.また,この実験では,提案手法が問題に応じて必要な数のルールを抽出する能力を持つことや,ノイズを含むデータに対しては,適応度式のパラメータの値によって収束するグループ数が変化することも確認した.次に3,4に対しては,肝胆嚢疾患データベースからの知識獲得を対象とした.このデータベースは,同一の入力データが異なる結果に分類された事例や,同一の分類結果であっても単一のルールで表現できないような事例を多く含んでいる.このデータベースを用いた実験により,診断規則を木構造で表現するための記号の設定,および適応度関数の設計を行い,診断のための複数のルールを抽出できることを確認した.
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