研究概要 |
「礼儀正しく」振舞うことができるインタフェースの構築に向けて,初年度は以下の三つの視点から研究を行った. 1)「礼儀正しさ」にノンバーバル情報が担う機能をモデル化するための理論的枠組みの構築 「礼儀正しさ」に関わるノンバーバル情報を体系的に整理する枠組みを構築するため,幅広い学問分野を横断的に調査し,礼儀正しさに関して体系的に記述する手法を検討した.本年度の調査の結果,「礼儀正しさ」に関わるノンバーバル情報を体系的に整理するには,ブラウンとレビンソンのポライトネス理論を援用することが最善であるとの結論を得た.このポライトネス理論とは語用論における枠組みであり,元来言語を対象とするものである.「礼儀正しさ」に関わるノンバーバル情報を体系化するための理論的枠組として,このポライトネス理論の拡張が適用可能であるか否かを検討した. 2)二者対話データの収集および探索的な解析 「礼儀正しさ」の状況依存的性質に着目し,多様な状況における自由対話データの収集するための実験を行った.本年度は主に非対面状況下での音声対話を取り上げた.話者同士の社会的な関係を強く反映する韻律特徴を探索するとともに,その特性を検討した.その結果,話者の社会的な立場の一致/不一致が,種々の韻律特徴の一致/不一致と対応している可能性が示された. 3)コンピュータの社会的振る舞いがもたらす人間の行動の変容に関する実験 擬人化されたアピアランスを持つインタフェースを用いて,ユーザのコンピュータへの入力行動の変容を実験的に検討した.その結果,ヒューマン・コンピュータ・インタラクションにおいても,人間が社会的な振る舞いを行うことが観察された.このことは,ユーザの行動を制御する手法として,インタフェースが社会的な属性を持つことの有用性を示唆している.
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