研究概要 |
a)実験用の匿名保証型DSSのインプリメント,b)内外の関連資料の収集,c)討議実験と評価,d)研究成果の発表を行った。各作業は,具体的には以下のように行った。 a):現実の意思決定機関に対し議案提出を行うための匿名討議システムの雛型を構築した。匿名性と責任感の維持の両立を図るため,匿名性を保証する代わりに全参加者に唯一不変もしくは少数不変のハンドルネームを与え,情報の受発信の履歴が各参加者を特徴づけていく環境とした。 b):既存のコミュニケーションシステムに関し,匿名性による不法な発言に対処するための対処法の調査を行った。DSS研究に関しても同様の調査を行った。不法な発言を招かないためのコーディネータの役割は比較的に大きく見積もられることが判った。ただし,現在までのところ,本研究におけるようなシステム的対処を合わせて行った前例は見出されていない。 c):次年度に行う本格的な討議実験の準備として,システムの動作確認を目的に,異なる大学で20〜30人規模の学生実験を2度行った。動作不良の箇所は見出されず,議論の質の向上に関する実験協力者の評価も良好だった。しかし,参加学生の討議状況より,結果的に匿名性が失われる状況(全員一致の場合等を含む)や文脈が失われる状況(発言者が文脈よりも発言回数を重視する場合等)が比較的容易に生じ得ることが判った。また,これらの問題には,投票集計ルーチンに詳細な投票結果を隠蔽する機構を含める技法や,発言資格を確率的に変動させる枠組みが有効であると判断した。現在,この観点から設計システムに改良を加えつつある。 d):匿名保証型DSSを紹介するとともに学生実験で得られた知見を説明するため,当初の計画通り,情報処理学会・社会情報学会(JASI, JSISの両学会)・情報文化学会・経営情報学会で大会報告を行った。また,16年度に開催される国際会議への投稿も行っている。
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