本研究において、さまざまな自治体において地域情報化政策がどのように推移し、どのような成果を上げているのかを具体的に調査した。各自治体における実績は多様で、安易な一般化はできないが、特に共通項を挙げるなら以下のようになる。1)80年代型の、国によるハード中心の地域情報化施策(テレトピア、ニューメディアコミュニティ)は、メンテナンス費用が出ないなどの問題点があり、かつ、技術進歩が速いために設備が陳腐化しやすく、数年でお荷物になったり、設備が廃棄される場合がある(アナログハイビジョン関連設備など)。テレワークセンターについてはコンセプトに問題があったためか、特に成功例が少ない。2)官庁同士の縄張りが地方自治体にも波及しており、郵政系の情報政策課と、通産系の産業課を中心に、建設系、厚生系などでヨコの連携が取れていない。3)eまちづくり施策など、ソフト中心、地域雇用重視型の、21世紀に入ってからの新たな地域情報化施策は、一面ではハード中心の施策を改善しているが、地域ソフトウェアハウスの技術力不足でシステムが組めない自治体があるなどの問題が浮き彫りとなった。4)この研究を進めている時期はちょうど折悪しく、平成の大合併と言われる施策が打ち出されたため、合併を行う自治体の情報政策課は、業務システムのシステム統合にマンパワーをとられ、本来行うべき情報政策の立案・遂行を行えない自治体が続出している。5)財政難のため、情報化関係予算の確保に多くの自治体が頭を痛めているが、それを説得するだけの材料や、有効な評価項目を見つけることについても困難で、手探りの試みが続けられている。
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