情報チャネルの増加は、消費者による選択の多様化の多様化を生むのであろうか、集中化を生むのであろうか。この疑問に答えるために、現実の市場における消費の偏りをGini係数を用いてを観察した。その結果、音楽、映画ソフト市場でWTA現象が強化されていることが観察された。 続いて、消費行動に情報行動を組み込んだ消費行動モデルを構築し、情報チャネル効果の理論構築シミュレーションをおこなった。 従来のネットワーク外部性の議論では、ある商品を購買した消費者の数で財の価値が決まるとされていた。しかし、本章で論じた音楽・映画ソフト市場のように社会的関係によって強く影響を受ける選択では、従来のネットワーク外部性の理論の上に、社会的関係のネットワークを考慮した説明理論が必要である。社会的影響を双方向情報チャネルの増加という側面でモデル化し、個人間の情報流通の変容を動的に把握できる操作的なモデルの構築をおこなった。これにより、情報チャネルの増加が音楽市場のWTAをもたらすという情報チャネル効果理論を提示することができた。 シミュレーション結果から、情報チャネルと消費者の構成の関係によって、消費の集中化であるWTAが発生する条件を提示した。 (1)同調消費者の多い市場では、情報チャネルの増加は消費の集中化を生む。つまり、WTAが強化する。 (2)流行消費者の多い市場では、情報チャネルが少ないとき消費の集中化が発生する。しかし、更に情報チャネルの増加することで消費の多様化を生む。
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