今年度は、依然個別的であり、総合的な検討もなされていない文化財に関わるネットワーク情報資源について、実態の解明に取り組んだ。まず、日本よりも情報資源の蓄積・公開が進んでいる海外における動向について、博物館等の関連機関で既に公開されている事例の調査を重点的におこない、全体の把握に努めた。その結果、米国と東アジアの一部(韓国)における進捗状況について、大枠の見通しを得ることが出来た。その結果は下記の通りである。 学術研究の拠点である大学の附属美術館では、その設置状況を反映して、館内のデータベースだけでなく、大学図書館を中心とした情報資源の保存・公開プロジェクトにも参加しており、より広い視野に立った対策がとられていることが明らかになった。書誌コントロールに関わる基準の導入についても、先進的な事例が見られた。独立した研究機関では、情報技術の面においても様々なツールや基準の開発・普及に取り組むなど、この分野をリードすると推測される活動が展開されていた。また、他の美術館では、技術的な面においてはさほど先進的ではないが、情報そのものの蓄積について大きな労力を費やしているという事例も見られた。情報公開に関わる部分に限定して適切な新技術を導入することで、人的経済的に大きな負担を強いる基幹システムの大幅な改変を避けるという点も効果的に作用していた。また、韓国の国立博物館では、文化財の情報に関しては、構造・内容とも統一的な情報システムが導入され、一貫した管理対策が講じられており、日本・欧米とは全く異なる様相が見られた。 書誌コントロールに関しては、文化財に関連するデータ標準について、ダブリン・コア、RDF、CIDOCのガイドラインおよびデータ・モデル、EAD等の内容と相互関係を重点的に調査した。 次年度には、日本も含めた実見調査をさらに加え、データ標準の普及・導入状況についても詳しく調査し、より細かい相互比較をおこなうことで、ネットワーク情報資源の特質と有効性を明らかにしたい。
|