本研究は、文化財に関わるネットワーク上の情報資源の有用性を明らかにし、流通基盤の整備について検討するために、書誌コントロールという側面からアプローチするものである。 平成16年度は、文化財に関わる情報資源の全体像を把握するため、実態調査を重点的におこなった。海外の動向について調査した結果、米国では博物館等においてメタデータ標準の先駆的な導入事例が見られ、EAD(Encoded Archival Description)、CDWA(Categories for the Description of Works of Art)、VRA Core Categoriesの採用が確認出来た。韓国の国立博物館では、文化財情報に関して、構造・記述内容ともに統一的なシステムが導入され、一貫した管理政策が講じられており、日本や欧米とは異なる様相が明らかとなった。 平成17年度は、画像情報管理の長い歴史をもつドイツの博物館での事例を調査した。ドイツでは以前よりMIDASという情報モデル(目録規則)に基づいたシステムが採用され、更にDISKUSという国内の文化財情報を集積した総合目録を運営しているが、現在はメタデータ標準の適応も可能なシステムを構築中である。一方国内では、CIDOC情報カテゴリーおよびデータモデルを参考にしたデータベース構築の事例を確認した。以上の実態調査と並行して、各種メタデータ標準についてその内容を重点的に調査し、相関関係を明らかにした。これらの調査結果を踏まえて、本研究にあわせて構築した文化財情報のデータベースに各種メタデータ標準を適応させ、情報モデルの構築を試みた。その結果、CRMが有用ではあるものの、メタデータ標準は各々に異なる特質があり、一つに収束させるよりも、情報資源の流通の促進のためには、メタデータ標準間を仲介するようなインターフェイスあるいは、クロスレファレンスツールの構築が有用であるという結論に達した。
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