研究概要 |
本年度は,人名と顔の連合学習に関する神経基盤が,学習からの時間経過とともにどのような動的な変化を示すのかを,機能的磁気共鳴画像装置(以下fMRIとする)を用いて検討した.被験者は右利き健常成人とした.被験者は実験前に顔と人名の連合学習を行った.その直後にfMRI装置に入り,スキャン前に学習した顔と,学習した人名と学習していない人名が同時に提示され,どちらの人名が顔と正しく連合するかを再認している際の神経活動が計測された.また,2週間後に同様の検査を行い,最初の学習からの時間経過とともに神経活動がどのように変化するかを計測した. その結果,左側頭葉先端部は直後再認・2週間後再認のどちらでも有意な神経活動が観察されたが,右側頭葉先端部は直後再認のみ有意な神経活動が認められ,2週間後にはその活動が有意に低下することが示された.このことから,左側頭葉先端部は顔と人名の連合における親近性(Familiarity)に関係なく,すべての人名の想起に重要な役割を果たしており,一方右の側頭葉先端部は新しく学習したばかりの人名の想起には重要であるが,顔と人名の連合が固定化(Consolidation)された人名の想起には重要ではないことが示唆された. また,情動的にポジティブな表情が顔と人名の連合学習に対してどのような効果を示すかを検討した.結果表情は人名の想起の成績や反応時間には有意な効果を示さなかったが,情動的な表情を反映する領域として扁桃体と側頭極の活動が観察された.
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