研究概要 |
互いに独立な2群のデータが与えられる場合,それらの差異の検討方法として,2群の興味のある未知パラメータの差の検定問題として定式化される場合や,生物学的同等性(bioequivalence)の検定問題のように,2群の未知パラメータの差がある許容限界内にあるか否かを検討する場合がある。本研究では,2群の差異を検討するためのパラメータとして平均値を考察の対象とし,各群のデータの従う分布が正規分布などのパラメトリックモデルで記述されないような場合,すなわちノンパラメトリックな場合に,同等性検定法を開発することを目的としている。本年度は,関連する文献の調査を行うとともに,代表的なノンパラメトリック法であるブートストラップ(bootstrap)法に着目し,各群のデータが互いに独立に同一の未知の分布に従う場合の同等性検定法の開発に関する研究を行った。ブートストラップ法を仮説検定の問題に適用する際,我々が観測できる(初期)標本は帰無仮説のもとで得られるものでないために,それに基づいて帰無仮説のもとでの検定統計量の分布を如何に近以するかが極めて重要な問題となる。これは,本研究の対象とする2群の平均値の同等性検定問題の場合も同様である。しかし,初期標本に対してある種の変換を行い,変換された標本からのリサンプリングを行うことによって,ある程度この問題の解決が図られるものと考えている。提案する手法の妥当性を検討するために,ある状況下でのブートストラップp値のモンテカルロ近似値,およびそれから計算される検定のサイズ,検出力に関するシミュレーション実験を行い,その数値的な挙動についての検討も行った。以上の成果は,2004年10月に中国で開催予定のThe 8th China-Japan Statistical Symposiumで発表するとともに,学術雑誌に投稿予定である。
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