研究概要 |
ある分布の母数の(関数の)推定量のクラスを不偏推定量全体に制限して,その中で分散を最小にする不偏推定量を考える.特に分散を母数に関して一様に最小にする不偏推定量があれば,それを一様最小分散不偏(UMVU)推定量といい,統計的推定論では重要な概念の一つである.適当な正則条件の下で,不偏推定量の分散の下限はCramer-Rao(C-R)の不等式によって与えられている.従ってC-Rの下限を達成する分布族は関心の対象となり,それは指数型分布族に限ることが良く知られている.しかし,UMVU推定量であってもその分散がC-Rの下限を達成するとは限らない.このような時にはC-Rの不等式を精密化したBhattacharyyaの不等式が知られている.ところがBhattacharyyaの下限を達成する分布族についてはC-Rの場合のようには明確にはなっていない. 最近研究代表者らは不偏推定量の分散がBhattacharyyaの下限を達成する分布族と指数型分布族との混合分布族との関係について考察し,Bhattacharyyaの下限を達成する分布族を従来考えられていた分布族より広い分布族においてもBhattacharyyaの下限を達成することを示した.しかし,同時に,指数型分布族の混合分布族でない分布族でもBhattacharyyaの下限を達成することを示した.つまり,Bhattacharyyaの下限を達成する分布族を特定するには至っていない.そこで,研究代表者は特に位置母数族,及び尺度母数族でBhattacharyyaの下限を達成する分布族について考察し,位置母数族においては正規分布族と指数ガンマ分布族,尺度母数族においては対数正規分布族と(拡張)ワイブル分布族に限ることを示した.研究代表者はこれらの研究の延長として引き続き位置尺度母数族でBhattacharyyaの下限を達成する分布族について研究中である.
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