研究課題
マルコフ連鎖モンテカルロ法は、特に3次元以上の高次元の分割表の解析において、さまざまな交互作用の有無を統計的仮説検定の枠組みで検証するための有用な方法のひとつである。これは数学的には、マルコフ基底と呼ばれる、標本空間上の連結な推移基底を求める問題に帰着することが知られている。本研究は、この、マルコフ基底の計算アルゴリズムの改良、および、マルコフ基底のさまざまな性質の解明に関する研究を行った。昨年までに得られた、極小なマルコフ基底の構造定理や、3元分割表の無3因子交互作用モデルに対する極小マルコフ基底の計算アルゴリズムの結果に加え、本年度は、マルコフ基底の収束速度に関連した性質の解明(文献1)、固定ゼロセルを含むような特殊な2元分割表のマルコフ基底の計算アルゴリズムの提案(文献3)、マルコフ基底の対称性に関する代数的研究(文献4)、極小マルコフ基底の構造定理に関連した、非一意な極小マルコフ基底の特徴付けのための考察(文献5)などを行った。いずれの結果も、統計学における分割表解析の問題を扱ったものであると同時に、計算機代数学におけるトーリックイデアルの研究という意味も持ち、統計関連学会のみならず、代数学、主にグレブナー基底の国際学会、研究集会において、成果発表を行った。特に、8月に立教大学で行われた国際研究集会、「International Conference on Theoretical Effectivity and Practical Effectivity of Groebner Bases」では、成果報告だけでなく、多くの代数研究者と有益なディスカッションを行うことができ、今後の更なる研究成果へとつながる見通しを得た。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (5件)
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