脳磁図(MEG)は、様々な脳活動計測技術の中で、特に時間分解能が高いという利点がある為、脳の活動部位だけでなく、詳細な時間情報を得ることが出来る。本研究では、MEG計測による脳活動のダイナミクスの解析を通じて、脳における情報処理の仕組みの解明を目指すことを目的とする。ただし、MEGは磁場という形で間接的に脳活動を計測している為、計測されたデータから有益な情報を得るには様々な技術が必要である。本研究では特に、近年注目されているブラインド信号分離法のMEGデータへの応用を試みている。 ブラインド信号分離法は、MEGデータ解析の様々なステージで応用可能である。ひとつは、MEGにおけるノイズ除去への応用である。MEGは脳活動による非常に微弱な磁場を計測するため、そのノイズ除去は大きな課題である。大抵のノイズは計測センサーの形状の工夫により殆ど除去されるが、特に電源ノイズはデバイスそのものに依存するものであるため除去は難しく、通常は帯域除去フィルタが用いられる。しかし帯域除去フィルタでは脳の活動そのものも除去してしまうなどの欠点がある。我々は、ブラインド信号分離法を応用し、MEGから効率的に電源ノイズを除去する方法を提案し、国際会議で発表した。他方、MEGは複数の部位で生じる脳活動を複数のチャネルで計測していることから、ブラインド信号分離法は、脳活動の信号源分離としても有効である。我々は現在、手首正中神経刺激による体性感覚野の脳活動に関し、ブラインド信号分離法での分離を試みているが、有望な結果が出ている。今後まとめる予定である。
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