研究概要 |
人間が手や腕を正確に制御するためには、脳がそれらの位置を知っている必要がある。このとき重要になる感覚は筋骨格系からの情報である固有受容器感覚である。本研究では、右手首、左手首、右足首または左足首の腱に振動刺激を与え、その四肢の動きの錯覚を惹起し、そのときの脳内賦活部位を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて同定した。錯覚中は実際の手の動きを伴わない。その結果、錯覚を経験している四肢とは反対側の一次運動野、補足運動野、帯状回運動皮質および同側小脳のそれぞれの四肢に対応する体部位再現部位が錯覚経験に関与することが明らかとなった。これらの領域は通常それぞれの四肢の運動実行に関与することが知られており、四肢の動きのフィードバック情報が体性感覚領域ではなく運動領域で処理されることが明らかとなった。また四肢の相違にもかかわらず右半球の運動前野吻側部、2野、44,45野、縁上回が共通に錯覚経験に関与することも明らかとなった。さらに、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて、運動錯覚経験への一次運動野の関与は、手首伸展筋の腱への振動刺激を停止した場合に起こるafter-effect経験中にも確認された。これらの一部は既に論文として掲載されている。
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