研究概要 |
1,マウスSir2αおよびSir3の中枢神経における局在 成体マウス脳切片を用いてSir2αおよびSir3抗体にて免疫染色を施行した。Sirは成熟ニューロン(N)、オリゴデンドロサイト(O)、白質や脳梁のアストロサイト(A)にはほとんど発現がなかったが側脳室壁の上衣細胞層ないしsubventricular zone(SVZ)に強く発現していた。同部位には神経幹細胞が存在するためさらに詳細に検討したところSVZアストロサイトと言われるtype B細胞の他にtype A, C細胞さらに上衣細胞にも発現が認められた。側脳室壁以外で神経系細胞の新生が見られる嗅球、rostral migratory stream、海馬歯状核においてPSA-NCAM, nestin陽性細胞にSir2αはなかったことからSVZ領域の神経幹細胞を含む未分化細胞と上衣細胞に限局した局在が示唆された。 2,Neurosphere assayにおける増殖・分化におけるSirの役割 Neurosphere assayを行い神経幹細胞の増殖過程においてSirファミリーの阻害剤であるnicotinamide, splitomicin, sirtinolを添加したところneurosphereの直径が小さくなった。細胞をFACSしたところ有意にS期の減少を認め細胞周期異常をきたすことで細胞増殖が妨げられたと示唆された。さらに個々のneurosphereをbFGF, EGFを除去した培地で培養するとN, A, Oの3種類の細胞に速やかに分化生じ、増殖中では高度に発現していたSir2αおよびSir3の発現は速やかに消失することを確認している。分化培地にsphereを移動した際にSir阻害剤を添加するとsphereの多分化能が著しく障害されることが明らかとなった。 以上よりSirが神経幹細胞の増殖・分化の分子メカニズムに重要な関与をしていることが示唆された。
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