線条体は、前頭皮質領域から強い興奮性の入力を受けその活動が制御されている。特に線条体で観察される2つの膜電位状態の遷移は線条体では形成されず、皮質からの同種のリズムにより起こることが示唆されている。それゆえ皮質から線条体へ出力を送る細胞の活動が皮質内でどのように形成されるかは非常に興味深い。本課題では線条体に逆行性のトレーサーを予め注入したラットから、スライス標本を作製しパッチクランプ法により、皮質-線条体投射細胞と抑制性介在細胞の2細胞同時記録を行い神経結合を調べた。脱分極性の通電に対して高頻度の発火を示すタイプの抑制性細胞(FS細胞)には主として3種類あることが知られており、それぞれ錐体細胞の軸索起始部、細胞体、樹状突起と主な入力部位が分かれている。このようにFS細胞は錐体細胞に対してその細胞の興奮性に比較的強い影響を与えると考えられるので、まずこれについて調べた。電気生理学的に神経結合を有していることが確かめられたペアについて(FS細胞は主として樹状突起に入力するタイプ)は、抑制性シナプス電流の振幅には平均3pAから100pAまでばらつきが見られ、短時間反復刺激に対しては、減退を示した。電気生理の記録の後、細胞内染色を行い記録細胞の再構成を行うと、投射細胞上において、神経結合の部位選択性が見られる傾向があった。すなわち、いずれも主に樹状突起に付くタイプではあったが、そのつきかたは個別の細胞によって異なり、細胞体だけについたり樹状突起だけについたりと特異性を示していた。シナプス電流の振幅の大きさと神経結合の仕方についてその相関性を調べると、結合部位の細胞体からの距離と比例して、細胞体で記録されるシナプス電流の振幅が変化しており、距離的な相関が観察された。
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