ヒトの脛骨神経に50Hz、2秒間の連続電気刺激を加えると、刺激停止後も持続するヒラメ筋の筋活動を誘発できる。この筋活動の性質について以下の2つの観点から検討した。 (1)持続的筋活動(SUS)、および同程度の随意的筋活動(VOL)中の脳活動を比較した。 ・fMRIを用いた検討:40秒安静-40秒筋収縮のタスクを各被験者(3名)につき6セット実施した。筋活動レベルが低く、VOL、SUSともに明確な脳賦活部位を同定できなかった。 ・TMSを用いた検討:一次運動野へのTMSによって生じるH反射促通の度合いを調べた(被験者5名)。脛骨神経刺激とTMSの時間差を調節し、TMSによって生じる皮質から運動ニューロンへの影響のうち、単シナプス性の成分のみがH反射の促通度として反映されるようにした。その結果、SUS中のH反射促通度はVOL中よりも有意に小さいことが明らかになった。SUSでは一次運動野の活動がVOLよりも低く、したがって、SUSの筋活動の少なくとも一部は脊髄内の自律的な神経活動によって維持されているものと考えられた。 (2)筋反射応答の振る舞い:SUSが生じる際、連続電気刺激中の筋反射応答は、最初の応答以後10回まではほぼ消失するが、その後急激に増大するという特徴を示す。刺激100回中の1発のみ(位置は2-100回目まで変化させる)をM波が生じる強度に設定し、筋線維応答性の変化を検討した。その結果、M波の大きさは、7回目までに元の値に復帰し、以降、一定の値を示した。したがって、筋反射応答の特徴的振る舞いは、筋線維の応答性では説明できず、運動ニューロンプールの興奮性の変化を強く反映していることが明らかになった。動物実験で報告されているプラトー電位が生じる際の運動ニューロンの発火周波数の加速的増大と類似した現象であると考えられた。
|